「アメリカ式根管治療」当院がこだわる”治す”ための治療スタンダード

      2025/10/01

みなさんお元気ですか?たまに歯の根っこあたりが腫れていた医院に痛い患者さんが来院されます。

「歯の神経を抜きましょう」「根の治療が必要です」

歯科医院でこのように言われて、不安に感じた経験はありませんか?根っこの治療は[根管治療]と呼ばれますが、どんなイメージをお持ちでしょうか。「何回もかかりそう」、「痛そう」、「また痛くなりそう」などのイメージがあるのでしょうか。

根管治療(歯の根の治療)は、歯を抜かずに残すための非常に重要な治療です。しかし、残念ながら「治療したのに再発した」「痛みが取れない」といったケースも少なくありません。根管治療には100%治る保証はありません。治る確率の問題になってきます。

なぜ、根管治療は治らないがあるのでしょうか?そして、どうすれば成功率(治る率)を高めることができるのでしょうか?

この記事では、過去にほかの先生方に根管治療についての基本を発表用にした際に使用したスライドの一部を使いながら、当院が大切にしている「治す」ための根管治療のスタンダード(標準的な考え方・手順)について、その根拠とともに詳しく解説します。少し専門的な内容も含まれますが、ご自身の歯を守るために、ぜひお読みいただければ幸いです。

根管治療の成否を分ける、たった一つのシンプルな原因

実は、根管治療が失敗する根本的な原因は、非常にシンプルです。それは**「細菌」**の存在です 。

歯の内部にある「根管」という細い管に細菌が感染し、そこで増殖することで、歯の根の先に膿の袋(根尖病巣)を作ったり、痛みを引き起こしたりします。

これを証明した有名な動物実験があります 。1965年に行われたこの実験では、ラットの歯に意図的に穴を開け、経過を観察しました

  • 通常の環境で育てたラット:口の中の細菌が穴から侵入し、歯の神経はすべて死に、根の先には膿が溜まってしまいました

  • 無菌の環境で育てたラット:細菌がいないため、歯の神経は死なず、穴が開いた部分は硬い組織によって自然に修復されました

この結果が示すのは、「もし細菌がいなければ、歯の神経は死なず、根の病気も起こらない」という事実です

つまり、根管治療の成功とは、いかにしてこの「細菌」を徹底的に除去し、再び侵入させないか、という点にかかっているのです

日本の根管治療の現状と「世界基準」の成功率

残念ながら、日本の保険診療における根管治療の成功率は、世界的な基準から見ると高いとは言えないのが現状です。東京医科歯科大学(現東京科学大学)の調査では、根管治療が施された歯の約60%で、根の先に病変(X線で黒く映る像)が確認されたという報告もあります

一方で、無菌的な処置を徹底した「世界基準」の根管治療では、最初の治療(Initial treatment)で90%以上という高い成功率が報告されています

この差はどこから生まれるのでしょうか?それは、治療の各ステップで、いかに「細菌」をコントロールできているかの違いに他なりません。

 

「治す」ために実践すべき根管治療の5つのステップ

世界基準の成功率を目指すため、以下のステップを徹底すべきだと考えます。

ステップ1:すべてはここから始まる「精密な診査・診断」

正しい治療は、正しい診断から始まります 。患者さんのお話を詳しく伺うことはもちろん(主訴)、レントゲン撮影やCT撮影によって、歯の根の本数や形、病巣の有無などを正確に把握します

なぜなら、見えないものは治療できないからです。この情報を基に、最適な治療計画を立案します

 

 

 

 

ステップ2:治療成功の鍵を握る「徹底した無菌的環境の構築」

ここが、根管治療の成否を分ける最も重要なポイントの一つです。細菌の感染を防ぐため、当院では以下の準備を徹底しています。

ラバーダム防湿

これは、治療する歯だけを薄いゴムのシートから露出させ、唾液や細菌が治療部分に侵入するのを防ぐための処置です 。唾液1mlの中には数億個もの細菌が存在すると言われています。ラバーダムを使用しなければ、治療中に細菌を根管内に入れているようなものです

アメリカ歯内療法学会のガイドラインでは「必須の処置」とされており 、ラバーダムの使用が歯の生存率を大きく高めるという研究報告もあります 。器具の誤飲防止など、患者さんの安全を守る上でも極めて重要です

う蝕(むし歯)の完全な除去と消毒

根管にアプローチする前に、むし歯に感染した部分を徹底的に取り除きます 。その後、ラバーダムを装着した上で、治療する歯とその周辺を消毒薬で清潔にします

 

ステップ3:細菌の巣窟を破壊する「根管の拡大・形成と洗浄」

無菌的な環境を整えたら、いよいよ根管内部の清掃に取り掛かります。

根管の拡大・形成

ファイルと呼ばれる細い器具を使い、感染した歯質や神経の残りなどを物理的に除去していきます 。このとき重要なのが、器具が根の先までスムーズに届くように入口を整える「ストレートラインアクセス」です 。これにより、清掃効率が格段に上がり、治療の精度を高めます。

 

当院では、根管の複雑な形態に合わせて、しなやかに曲がるニッケルチタンファイルなども活用し、歯を削る量を最小限に抑えつつ、隅々まで清掃することを目指します

 

徹底した根管洗浄

物理的な清掃だけでは、根管の壁に付着した細菌や汚れを完全に取り除くことはできません 。そこで極めて重要になるのが「根管洗浄」です 。

当院では、主に2種類の洗浄液を使い、化学的に細菌を無力化します。

  1. 次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl):細菌を殺菌し、神経の残りなどの有機物を溶かす強力な効果があります

  2. EDTA:歯を削った際に出る削りカス(スメアー層=無機物)を除去し、根管の壁の奥に潜む細菌を露出させる効果があります

これらの洗浄液を適切な濃度と順番で使用し 、超音波振動などを併用して洗浄効果を最大限に高めることで 、根管内を徹底的にクリーンにします。

ステップ4:細菌の再侵入を防ぐ「緊密な根管充填」

根管内が綺麗になったら、再び細菌が入り込んで繁殖するスペースを与えないよう、隙間なく薬で封鎖します 。これを「根管充填」と呼びます。ガッタパーチャというゴムのような素材と、シーラーというセメントを使い、根の先まで緊密に充填します

治療の合間には、「仮封」という仮の蓋をしますが、この蓋も非常に重要です。仮の蓋に隙間があれば、そこから細菌が侵入してしまうため、3~4mmの厚みを確保し、圧接しながら緊密に封鎖します

ステップ5:治療の成果を守る「早期かつ確実な土台と被せ物」

実は、根管治療の長期的な成功は、最後の「被せ物(補綴物)」の精度に大きく左右されます。せっかく根管内をきれいにしても、被せ物に隙間があって唾液(細菌)が漏れてしまえば(コロナルリーケージ)、すべてが台無しになってしまうのです

ある研究では、根管治療と被せ物の両方が良好な場合の成功率が91.4%であったのに対し、根管治療は良好でも被せ物が不良だった場合の成功率は44.1%まで激減したと報告されています

このデータは、「被せ物は根管治療の最後の仕上げではなく、治療の成否を決定づける重要な一部である」ことを示しています。

そのため当院では、根管治療後はできるだけ早く、精度の高い土台(支台築造)と被せ物で歯を密封することをお勧めしています 。特に奥歯は噛む力が強くかかり破折しやすいため、歯全体を覆うクラウンによる修復が推奨されます

 

 

より高い成功率と快適性を追求する方へ:自費根管治療という選択肢

ここまでご説明してきた内容は、当院が保険診療においても実践している「治す」ためのスタンダードな治療です。

それに加えて当院では、さらに精密で成功率の高い治療、そして患者さんの負担を軽減するための選択肢として、自費診療による根管治療メニューもご用意しております。これは、保険診療の制約にとらわれず、現時点で最良と考えられる材料や時間を投入して、歯の未来を確かなものにしたいと考える方のためのオプションです。

具体的には、以下の点がスタンダードな治療に加わります。

① 治療回数を最小限に抑える「集中治療」(1回90分)

通常、根管治療は30分程度の治療を数回に分けて行います。しかし、治療と治療の間が空くと、仮の蓋の隙間から細菌が再侵入するリスクがわずかながら高まります

自費根管治療では、1回に90分の治療時間を確保することで、治療工程を集中して行い、来院回数を最小限に抑えます。これは、お忙しい方にとって通院の負担が減るだけでなく、再感染のリスクを極限まで低減させるという点で、治療成功率を高める上でも非常に有効なアプローチです

 

② 肉眼の限界を超える「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)精密治療」

歯の根管は、直径1mmにも満たない非常に暗く複雑な形態をしています。肉眼やルーペ(拡大鏡)での治療には限界があります。 マイクロスコープを使用すると、根管の内部を最大で20倍以上に拡大し、明るい視野で確認しながら治療できます。 これにより、肉眼では見えないような、感染源の取り残し、複雑な根管の見落とし、歯の微細なひび割れ(破折線)などを発見できる可能性が格段に高まります。診断と治療、両方の精度を飛躍的に向上させるための強力なツールです。

③ 身体に優しく、再発を防ぐ「バイオセラミックシーラー」の使用

根管充填の際に使用するシーラー(セメント)に、生体親和性に優れた「バイオセラミック」という最先端の材料を使用します。 このシーラーは、根管の隙間を緊密に封鎖する能力が非常に高いだけでなく、強い殺菌性を持ち、さらには周辺組織の再生を促す効果も報告されています。身体に優しく、アレルギーのリスクも低い材料で根管内を封鎖することで、治療後の治癒を助け、再感染・再発のリスクをさらに低減させることが期待できます。

④ 安全性と性能を最大化する「ディスポーザブル器具の使用」

根管内を清掃するファイルなどの器具は、非常に精密で繊細です。使用を重ねると、目に見えないレベルで劣化が進み、切削効率が落ちたり、根管の途中で折れてしまう(破折)リスクが高まったりします。 自費根管治療では、これらの器具を患者様ごとに常に新品・未使用のもの(ディスポーザブル)を使用します。 これにより、器具の破折リスクを回避し、常に最高の性能で精密な治療を行うことができます。また、患者様から患者様へ器具を介した感染(交差感染)のリスクを完全にゼロにできるため、衛生面でも最高レベルの安全性を確保します。

 

これらの先進的な治療は、当院がすべての根管治療で大前提として実践しているラバーダム防湿といった基本原則の上になりたっています。

ご自身の歯を1本でも多く、長く健康に残したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。それぞれの歯の状況に合わせて、最適な治療法をご提案させていただきます。

この自費根管治療の詳しい料金に関しては、ホームページの料金表を参照してください。

https://keyaki-mbdc.jp/price

まとめ:精密な治療で、あなたの大切な歯を守るために

根管治療は、目に見えない歯の内部で行う、非常に繊細で精密さを要求される治療です。成功のためには、

  • 確実な診査診断

  • ラバーダムによる徹底した防湿と無菌的環境

  • 機械的・化学的なアプローチによる徹底した根管洗浄

  • 隙間のない確実な根管充填と仮封

  • 早期の確実な土台と被せ物による歯冠修復

これら一つ一つのステップを、基本に忠実に、一切妥協せずに行うことが不可欠です。

当院では、この「スタンダード」な治療を実践することが、結果的に歯の寿命を延ばし、患者さんの利益に繋がると確信しています。根管治療について不安なこと、疑問なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。



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