【親知らずの抜歯】痛い?抜くべき?前橋の歯科医院がCTを使った安全な治療を解説
「親知らずが痛む…」「大学病院を紹介されたらどうしよう…」 親知らずの悩みは尽きませんが、「抜歯は痛くて怖い」というイメージも強く、不安に感じている方は少なくないでしょう。
当院では、難易度の高い親知らずの抜歯も、可能な限り自院で完結する方針をとっています。その背景には二つの想いがあります。
一つは、地域の基幹病院である群馬大学医学部附属病院などの高次医療機関が、口腔がんや専門的な手術など、本来の役割にさらに専念できるようにするという、地域医療への貢献です。
もう一つは、「抜歯はすべての歯科外科治療の基本であり、最も大切な手技である」という信念です。抜歯術はすべての歯科外科治療における、最も基本的かつ最も奥深い手技です。私の恩師である長崎大学の口腔外科の朝比奈教授はいつも外科は「抜歯に始まり、抜歯に終わる」と仰っていました。新人の頃は抜歯から処置をし、やがては骨折、がんなど高度なものに向き合うが、結局最後はやはり抜歯が一番難しいよねという帰結になるそうです。歴の長い教授の話だから説得力があります。歯を抜くという一つの処置には、骨や神経といった繊細な組織を傷つけない精密な技術と、深い解剖学的知識が凝縮されています。インプラント治療や、骨が少ない難症例で行う骨造成、上顎洞挙上術(サイナスリフト)といった、より複雑な外科処置の成否も、すべてはこの抜歯の技術が土台となります。私たちは、この基本となる手技を絶えず鍛え続けていくことこそが、インプラント治療をはじめとする、より高度な外科処置の精度を高めることに繋がると考えています。自分から見れば、縫合の手を見ればこの先生の外科技術はほぼわかります。縦切開を15秒以内に一発で縫合できない先生は、、、(おっと誰かが来たようだ)
先ほどは失言いたしました。気を取り直して、この記事では、皆様の不安を少しでも和らげるため、親知らずの基礎知識から、抜歯が必要なケース・不要なケース、そして当院が採用しているCTを用いた安全な抜歯方法まで、専門的な内容も分かりやすく解説していきます。
そもそも「親知らず」とは?なぜ問題が起きやすいのか
親知らずは、専門用語で「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」または「智歯(ちし)」と呼ばれ、一番奥に生えてくる永久歯です
現代人は食生活の変化により顎が小さくなる傾向にあり、親知らずがまっすぐ生えるためのスペースが不足しがちです。そのため、以下のような問題を引き起こします。
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埋伏(まいふく): 骨の中に完全に埋まったまま出てこない。
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半埋伏(はんまいふく): 歯の一部だけが歯茎から顔を出している。
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傾斜: 横や斜めを向いて生えてきて、隣の歯(第二大臼歯)を押してしまう。
これらの状態は、歯磨きが非常にしにくく、汚れが溜まりやすいため、様々なトラブルの原因となります。
「私の親知らず、抜くべき?」抜歯の判断基準
すべての親知らずを抜かなければならないわけではありません。抜歯を推奨するケースと、そのままでも問題ないケースについて解説します。
【抜歯を強く推奨するケース】
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智歯周囲炎(ちししゅういえん)を繰り返している 半埋伏の親知らずの周りに汚れが溜まり、歯茎が腫れたり、膿が出たりする状態です。重症化すると口が開けにくくなるほどの激痛を伴います。
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親知らず自体が虫歯になっている 一番奥にあるため治療器具が届きにくく、治療が困難なケースが多いため、抜歯が第一選択となることがあります。
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隣の健康な歯(第二大臼歯)を虫歯や歯周病にしている 親知らずとの間にできた隙間に汚れが溜まり、隣の歯が虫歯になったり、歯を支える骨が溶ける歯周病になったりします。これは親知らずを放置する最大のリスクの一つです。
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歯並びやかみ合わせに悪影響を与えている 横向きに生えた親知らずが隣の歯を押し続け、全体の歯並びを乱す原因となることがあります。
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嚢胞(のうほう)の原因になっている ごく稀に、埋伏した親知らずの周りに液体が溜まった袋(嚢胞)ができ、顎の骨を溶かしてしまうことがあります。
【抜歯が不要な(経過観察でよい)ケース】(割と少ないように思います)
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上下でまっすぐ正常に生えており、しっかり噛み合っている。
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歯磨きがきちんとできており、虫歯や歯周病のリスクが低い。
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完全に骨の中に埋まっており(完全埋伏)、今後問題を起こす可能性が低いと判断される。
ご自身で判断するのは難しいため、まずは一度歯科医院でレントゲン撮影などを行い、専門的な診断を受けることが重要です。
【歯科医師の視点】抜歯の難易度を測る「ウィンター分類」
特に下の親知らずの抜歯は、その生え方によって難易度が大きく変わります。歯科医師は抜歯計画を立てる際、レントゲン画像をもとに親知らずの傾きを客観的に評価します。その代表的な評価法が「ウィンター分類(Winter's classification)」です。
これは、親知らずが隣の歯(第二大臼歯)に対してどの角度で埋まっているかによって分類する方法です。
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Ⅰ級(垂直位 / Vertical): ほぼまっすぐに生えている状態。比較的抜歯しやすいケースが多いです。
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Ⅱ級(近心傾斜 / Mesioangular): 前方に傾いて生えている状態。親知らずの埋伏で最もよく見られるタイプです。傾斜の角度によって難易度が変わります。
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Ⅲ級(水平位 / Horizontal): 真横(水平)を向いて完全に倒れている状態。歯をいくつかに分割して取り出す必要があり、抜歯の難易度は高くなります。
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Ⅳ級(遠心傾斜 / Distoangular): 後方に傾いて生えている状態。頻度は低いですが、抜歯の際に器具が届きにくく、技術を要する場合があります。
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その他(頬側傾斜、舌側傾斜など): 頬や舌の方向に傾いている特殊なケースもあります。
歯科医師は、このウィンター分類に加え、歯の根の形や骨の硬さなども総合的に評価し、最適な抜歯方法と手術時間を予測します。
当院の抜歯:歯科用CTによる「3次元診断」で安全な抜歯を
下の親知らずの抜歯で最も注意すべき合併症の一つが、神経麻痺です。下顎の骨の中には「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という太い神経が通っており、唇や顎の皮膚の感覚を司っています。親知らずの根の先がこの神経に非常に近い、あるいは接している場合、抜歯の際に神経を傷つけてしまうリスクがあります。
従来の2次元のレントゲン写真では、歯と神経の正確な位置関係(神経が根の前にあるのか、後ろにあるのか、根の間を通っているのかなど)を把握するには限界がありました。
そこで当院では、
埋伏抜歯など難易度が高いケースにおいて、歯科用CTによる3次元的な画像診断を必ず行います
【CT診断のメリット】
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神経と歯根の位置関係をミリ単位で正確に把握できる
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歯根の複雑な形や、骨の厚みなどを立体的に確認できる。
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手術前にあらゆるリスクをシミュレーションし、安全な切開ラインや骨の削除量を計画できる。
- 埋伏歯の頬舌的位置関係(喉の近くに寄っているかほっぺたに寄っているか)を確認できる
このようにCTによる精密な診断にこだわるのには、理由があります。
「丁寧な抜歯こそが、すべての外科治療の礎である」という哲学と、それを実現するためのCTによる精密診断との組み合わせにより、当院では大学病院レベルの難易度の高い埋伏抜歯も、外来(日帰り)で安全に行うことが可能なのです。もちろん、全身麻酔での抜歯がおすすめの際はきちんと説明し、高次医療機関に紹介することもあります。
親知らず抜歯の流れと抜歯後の注意点
1. カウンセリング・検査 :お悩みをお伺いし、レントゲンやCTによる精密検査で親知らずの状態を診断。抜歯の必要性や手順、リスクについて詳しくご説明します。
2. 抜歯当日: 十分に局所麻酔を効かせてから処置を開始します。麻酔が効けば、処置中に痛みを感じることはほとんどありません。(CTは当日にとることも多いです)
3. 抜歯後 :傷口を縫合し、止血用のガーゼを噛んでいただきます。痛み止めや化膿止めの抗生剤を処方します。
4. 消毒・抜糸: 通常、翌日に消毒、約1週間後に抜糸のためにご来院いただきます。
【抜歯後の主な注意点】
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血行が良くなる行為は避ける: 抜歯当日の飲酒、長風呂、激しい運動は控えてください。
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傷口を刺激しない: 強くうがいをしたり、指や舌で傷口を触ったりしないでください。
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食事: 麻酔が切れるまでは食事を控え、その後は柔らかく刺激の少ないものから摂るようにしてください。
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喫煙: 喫煙は傷の治りを著しく悪くするため、少なくとも抜歯後1週間は禁煙してください。
合併症
上顎・下顎に共通する一般的な合併症
まず、抜歯という外科処置に共通する一般的な症状として、以下のものが挙げられます。
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発赤
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腫脹
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出血
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疼痛
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機能障害(開口障害など)
上顎の智歯抜歯に特有の合併症
上顎の親知らずは、上顎洞(鼻の横にある骨の空洞)と位置が近いため、抜歯の際に上顎洞と交通してしまう上顎洞穿孔(じょうがくどうせんこう)のリスクがあります。ただリスクは低いです。また、穿孔が起きてもやがてはふさがるのがほとんどです。中には処置が必要なトラブルもありますが、ほとんど見ません。
下顎の智歯抜歯に特有の合併症
下顎の親知らずの抜歯で最も注意すべき合併症は神経麻痺です。
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原因となる神経: 下顎の骨の中には「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という太い神経が通っています。
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麻痺の影響範囲: この神経は、唇や顎の皮膚の感覚を司っています。
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リスク: 親知らずの根の先がこの神経に非常に近い、あるいは接している場合、抜歯の際に神経を損傷してしまうリスクがあります。ただ、このリスクも高いものではないです。私はいままで、500本以上の歯を抜いてきたのでしょうか。幸いなことにまだ一度も神経麻痺に遭遇したことがないです。とてもありがたいことではありますが、確率的には低いものです。もちろんリスクが高い症例の場合はそれなりに留意して対応しているので、遭遇しないというのもあると思います。
まとめ:不安な親知らず、まずは専門家にご相談を
親知らずは、痛みなどの自覚症状がなくても、水面下で問題を引き起こしている可能性があります。そして、抜歯は若く、骨が柔らかい年齢のうちに行う方が、体への負担が少なく、治りも早い傾向にあります。
「私の親知らずはどうなっているんだろう?」
「いつか抜かなければいけないのか不安…」
そのように感じたら、ぜひ一度、けやきウォーク前橋内の「前橋けやき歯科・矯正歯科」へご相談ください。最新のCT設備を用いた精密な診断と、豊富な経験に基づいた安全な治療で、皆様の不安にしっかりとお応えします。無理に抜歯を勧めることはありませんので、安心してお越しください。
それでは明日もがんばりましょう!!
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